◆老子小話 VOL
961 (2019.04.13配信)
宇宙がなんであるかを知らぬ者は、
自分がどこにいるかを知らない。
(マルクス・アウレリウス)
NHKのEテレの100分de名著で、
「自省録」をやっています。
ローマ皇帝で哲学が好きだった、
アウレリウスのメモ帳が「自省録」
だそうで、今回はそこから選びました。
宇宙というと果てしないですが、自然と
考えれば身近になります。
自然のしくみを理解しなければ、自分の
居場所がどこなのか理解できない。
夏目漱石も「思い出す事など」の中で、
宇宙の生い立ちにおける人間の運命を
「我等が生くべき条件の備わる一瞬時」
と呼んでいます。
また、
「人間のために出来た空気ではなくて、
空気のために出来た人間なのである。」
といい、空気によって生かされる人間
の立場を自覚します。
人間はとかく自己中心的に物事を考える。
ところが、アウレリウスも漱石も、
「宇宙の歴史の一瞬を飾る存在」という
自己認識が、人間の生き方の原点になる、
といいます。
その原点に立てば、生死はただ至当の成行
でそこに喜び、悲しむ理屈は少しもないと
漱石はいいます。
皇帝という、いわば国家の経営者が、この
壮大な人間認識をもっていたことに驚く
ばかりです。
しかも、この認識を他人に説くことをせず、
内省のメモにとどめ、公表しなかったという
点にも驚きます。
現代の経営者だったら、上から目線で自分の
哲学を参考にしてねというでしょう。
哲学というのは、自分で考えないとダメで、
誰かに教わるものではありません。
自分で考えて自分で決めるので、納得でき、
後悔は生まれません。
アウレリウスの言葉は、人を相手に生きる
のではなく、人間を超えた自然を相手に
生きる大切さを教えます。
有無相生