◆老子小話 VOL
955 (2019.03.02配信)
衰颯的景象、就在盛満中。
発生的機緘、即在零落内。
(菜根譚)
衰颯(すいさつ)の景象は、
就ち盛満の中に在り、
発生の機緘(きかん)は、
即ち零落の内に在る。
今回は菜根譚の助けを借りました。
難しい漢字が並びますが、言葉の意味
は左程難しくありません。
「ものごとが衰えるきざしは、
最も盛んなときに既に始まる。
新しい芽生えの働きは、葉が落ちつくした
ときに既に起きている。」
栄枯盛衰は、波動のようにやってくる。
山が来れば谷の始まりで、谷が来れば
山の始まりである。
山の上にいることは、下りの始まりで、
谷底にいることは、上りの始まりです。
平家物語にも、「おごれる者は久しからず」
とあります。
勢力が強大なときには、自分が天下をとった
ような気分になり、油断をする。
それが衰えのきざしを見過ごす結果となり、
気がついたときは既に手遅れとなる。
一方、最悪な状況のとき、地の底から天上を
見上げることになる。
天から降るものはすべて光り輝いている。
あらゆるものが生まれ変わりのきっかけを与える。
ビジネス界では、「ピンチはチャンス」という。
ピンチのときほど必死に考えて抜け出そうとする。
何も失うものがないと、失敗を恐れず挑戦する。
反対に盛んなときは、背負うものが大きくなり、
失う事を怖れ、冒険に対し消極的になる。
少子高齢化は、少数の若者が多数の高齢者の生活を
負担するという日本のピンチ。
成長がいつまでも続くという前提で作った年金制度
が破綻することを見過ごしたつけが回ってきました。
しかしこのピンチも、新たなビジネスチャンスを
生んでいます。
高齢者ができそうな仕事を提供することです。
早朝の仕事や在宅の仕事なら、普段の生活のリズム
を乱さずに、適度な量の仕事ができます。
仕事を通して、いろいろな人と触れ合うことで、
孤独にならず心身の健康を保てます。
永年の経験で得たノウハウを若者に伝えることも、
生きる支えとなります。
昔は、姨捨山という高齢者を隔離する風習があった。
今は、高齢者融合社会という高齢者を取り込む
仕組みでないと、社会が存続できない。
神(自然)は、死(寿命)といううまい世代交代の仕組み
を作った。
今多い高齢者が死ねば、今の少子が高齢者になるときは、
少ない高齢者を少ない若者で支える新たな社会になる。
菜根譚に先んじて、老子にも「反る者は道の動なり」と
ある。
自然の働きは波動の原理で、山から谷、谷から山に
戻っていくのが、自然の流れと見る。
山の上にいるときに、谷に落ちていく覚悟を持てば、
落ちていくときに慌てずに済む。
一番怖いのは、慌てるという心のぶれという。
なるほど、菜根譚もそれを教えているようだ。
有無相生