◆老子小話 VOL
953 (2019.02.16配信)
私たちの人格そのものが
半分は他者のお陰なのである。
(平野啓一郎、「私とは何か」)
個人を英語でindividualといいますが、
これは肉体についていえることで、
存在のあり方でいえば、分人(dividual)の
集合体と考えられる。
Individualという、分けられない「本当の自分」
があると考えると息苦しくなる。
「本当の自分」はいないからです。
分人というのは、相手との相互関係の中で形成
される人格のようなもので、相手により人格を
使い分けて社会生活をするというのが現実の姿
のようです。
口うるさいおやじに付き合わされると、神経過敏
な子に変貌するようなものです。
人格形成の半分は他者によりなされると考えると、
気楽になります。
他者から離れれば、その人によって生まれた人格は
消滅していきます。
人格は一定したものではなく相手により常に変化する。
相手の影響を受けながら自分の性格は変化していくと
考えると、どのような相手と付き合うか大事になる。
人格形成の残りの半分は、当然、自分の責任になる。
付き合う相手を選ぶのは、自分だからです。
しかし学校や会社という組織に入ると、相手を選ぶのが
難しいことがある。
そんなときは、逃げ道の分人を作っておくことです。
平野氏のいう他者は、本の中の他者や死者、あるいは
人間を超えた大自然を含みます。
大自然の中で形成される粘り強い性格もあります。
そういった意味では、大自然の教えである老荘思想も
人格形成において、重要な役割を果たします。
有無相生