◆老子小話 VOL
950 (2019.01.26配信)
いかのぼりきのふの空の有りどころ
(与謝蕪村)
今日は蕪村の句を取り上げます。
「いかのぼり」は、大空にイカが舞うように、
凧(たこ)が上っている様子です。
凧揚げの様子を見ている蕪村は、子供時代を
思い出しています。
昔見た凧はどんなふうに舞っていたのだろう?
凧は風に吹かれ空に上るので、同じ場所に
とどまらない。
大空に自分の過去を描いていく。
揺れ動く凧は、大空のどの辺りを舞っていたのか?
「有りどころ」という言葉は、単に時空間の一点
ではなく、風にあおられてゆらいでいる様を表現
しているようです。
そうすると、過ぎ去った過去に揺らいでいる凧が
自分自身に思えてくる。
糸が切れた凧のように時空間をさ迷うのではなく、
あおられながらも、糸に支えられながら有りどころ
を見つける事ができた幸運を蕪村は感じているのかも
しれません。
凧揚げを見て、凧の振る舞いから昔の自分を思い出す
までには時間のずれがあり、実世界から夢の世界へ
視点のずれがあります。
17文字でこの絶妙な変転を表現する蕪村に感動します。
有無相生