老子小話 VOL 950 (2019.01.26配信)

いかのぼりきのふの空の有りどころ

(与謝蕪村)

 

今日は蕪村の句を取り上げます。

「いかのぼり」は、大空にイカが舞うように、

凧(たこ)が上っている様子です。

凧揚げの様子を見ている蕪村は、子供時代を

思い出しています。

昔見た凧はどんなふうに舞っていたのだろう?

凧は風に吹かれ空に上るので、同じ場所に

とどまらない。

大空に自分の過去を描いていく。

揺れ動く凧は、大空のどの辺りを舞っていたのか?

「有りどころ」という言葉は、単に時空間の一点

ではなく、風にあおられてゆらいでいる様を表現

しているようです。

そうすると、過ぎ去った過去に揺らいでいる凧が

自分自身に思えてくる。

糸が切れた凧のように時空間をさ迷うのではなく、

あおられながらも、糸に支えられながら有りどころ

を見つける事ができた幸運を蕪村は感じているのかも

しれません。

凧揚げを見て、凧の振る舞いから昔の自分を思い出す

までには時間のずれがあり、実世界から夢の世界へ

視点のずれがあります。

17文字でこの絶妙な変転を表現する蕪村に感動します。

 

有無相生

 

 

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