老子小話 VOL 947 (2019.01.05配信)

上善若水。

水善利萬物、而不爭。

處衆人之所惡。

(老子、第八章)

 

上善は水の若し。

水は善く万物を利して、而も争わず。

衆人の悪む所に処る。

 

新年明けましておめでとうございます。

2019年初めの言葉は老子から選びました。

老子は、最高の善は水のようだと言います。

水は万物の生長を助けますが、他と競争する

ことはなく、皆がさげすむ低い所にいる。

そのような生き方が最高の善であるという。

まるで藤沢周平の小説に出てくる侍のようです。

確かに、水というのは空気みたいな存在で、

あるのが当たり前でその恩恵を普段感じません。

ところが断水になれば、ごはんも炊けず、

トイレも使えず、日常生活が成り立ちません。

更に下水により汚物を処理場に運ぶ働きもします。

見えない所で人間社会を支えています。

水は、川、海、雲として、生命の維持を支えます。

細胞に栄養を取り込むのは水です。

川は山から養分を運び、肥沃な土地を作る。

さらに水は大地から蒸発し雲を作り、雨となって、

動植物に恵みを施す。

自分自身に課せられた役割を黙々と果たしていく。

誰かと競争したり、自慢したりすることはない。

しかし、その仕事は社会の底辺で社会を支える。

社会には生命を絶つ仕事もある。

死刑執行する刑務官や、食肉を得るために屠殺場で

働く方々などの仕事は、皆やりたがらない。

しかしそれらの仕事をやり遂げて、社会が成り立つ。

「上善は水の若し。」とは、職業に貴賎はなく、

自身の職業に誇りをもって、水のように社会を支える

ことだと思います。

 

有無相生

 

 

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