老子小話 VOL 941 (2018.11.24配信)

富與貴、是人之所欲也。

不以其道得之、不處也。

(論語、里仁第四)

 

富と貴きとは、是れ人の欲する所なり。

其の道を以てこれを得ざれば、

処らざるなり。

 

日産のゴーン会長が逮捕されたニュースが

世界を廻りました。

会社の危機を救い、V字回復を成し遂げた

功績により、ゴーンさんはその富と高い地位を

得たのは誰もが知るところです。

そんな人が逮捕されるほど悪いことをしたのか

と目を疑いましたが、不正や横領の事実が暴露

されるに従い、人間の怖さを思い知らされました。

そこで、今回は論語のことばを氏に捧げます。

「富と高い地位は誰もが欲しがるもの。

しかし、それ相当の方法で得たのでなければ、

そこに安住することはできない。」

安住するとは、持続性をいいます。

ゴーンさんは大きな功績をあげたので、富と地位

を得たのは当然です。

しかしそれを持続する道をあやまった。

富と地位を得た後は、自分の身を正し、高潔さを

保たなければ、誰もついてこない。

それを権力だけで維持しようとするので、その不正を

内部告発されるに至った。

ゴーンさんから見れば、「君たちもその不正を長年に

わたり認めていたではないか」というでしょう。

母国フランスでは、今回の逮捕はゴーン体制に反発する

経営陣のクーデターと評価する人もいます。

まるでシーザーを暗殺したブルータスのようだと。

日産の大株主がルノーで、ルノーの大株主がフランス政府

という入れ子状態になっています。

ゴーンさんの絶対権力でルノーに組み込まれ、会社の独立性

が損なわれると危惧し防衛策をとるのは、日本人経営者なら

当たり前のことで、それをクーデターと呼べないこともない。

ゴーンさんの悲劇は、高潔さを忘れて、その富と地位を

絶対権力に頼って維持しようとした所にある。

論語は、自分の利益だけを考えていては、富も地位も持続

できないと教えます。

人の道に反していては、誰もついて来ない。

論語は更にことばをつなぎます。

「君子は義に喩り、小人は利に喩る。」(里仁第四)

 

有無相生

 

 

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