老子小話 VOL 939 (2018.11.10配信)

夢之中又占其夢焉、

覚而後知其夢、

且有大覚、而後知此其大夢也、

(荘子、斉物論第二)

 

夢の中にその夢を占い、

覚めて後にその夢なることを知る。

且つ大覚ありて、しかる後に

大夢なることを知る。

 

今回は荘子の言葉をお届けします。

京都に大覚寺という寺がありますが、

荘子からとったものかもしれません。

「夢の中で夢占いをし、夢から覚めて

それが夢だったことを知る。

人生も同じことで、本当の目覚めがあって、

人生が大きな夢だったことを知る。」

織田信長の辞世の句、

「下天のうちをくらぶれば 夢幻のごとくなり」

にあるように、大覚は死に直面したときに至る

境地のようです。

修行僧が悟りを開くのも、死に直面する修行の

果てだったりします。

明日死ぬと考えたとき、今までの人生が夢の

ように思い浮かび、大事なものが見えてくる。

人間の頭は連続性を前提に考える。

今まで起こった事が将来も連続的に起こり続ける。

夢も、現実と空想の間を連続性でつなぐ物語です。

惰性に埋没していたものを発掘するには、

その連続性を切断するきっかけが必要になる。

まるで、地層に埋もれていた化石が断層で

見つかるように。

人生においては、死が切断の機会になる。

荘子の言葉は、生の意味を悟るには、大覚と

いう切断機会が必要になると教えてくれました。

大覚があれこそ、人生という夢の意味も大きく

なるようです。

 

有無相生

 

 

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