老子小話 VOL 937 (2018.10.27配信)

萬物草木之生也柔脆。其死也枯槁。

故堅強者死之徒。柔弱者生之徒。

(老子、第76章)

 

万物草木の生ずるや柔脆、

其の死するや枯槁す。

故に堅強なる者は死の徒、

柔弱なる者は生の徒なり。

 

今回は老子に復帰しました。

人間が生まれるときは、柔らかな体ですが、

死ぬときは硬直して堅くなります。

草木も生まれるときは柔らかで、

死ぬときは枯れて堅くなります。

従って、柔軟性を失い強固なものは死の仲間。

柔軟で弱弱しいものは生の仲間。

ひとは人生の荒波を乗り越えるため、強い心身

を目指します。

強くなればなるほど荒波の抵抗を受け、命を

すり減らすので、死の仲間という。

一方、波に立ち向かわずに、柔らかな体を

しならせて波をやり過ごすごとができる。

「柳の枝に雪折れなし」という故事があるように、

柳の枝は柔らかくしなやかなため、風雪に耐える。

会社のような組織でも同じです。

会社が生まれた当時は社員も少なく、新規事業にも

柔軟にチャレンジができます。

社員が増えて組織が大きくなると、収益性、継続性

を気にして、新規事業への参入を足踏みする。

組織の衰退は、新陳代謝が衰えたとき始まる。

人間の脳だけは、歳に関係なく、使えば使うほど

柔らかになる。

高齢になっても、柔らかい脳は保てます。

芸術家が長寿なのは、芸を磨くことに頭を使うため

と考えられます。

体も脳もしなやかさを失ったときに、生気を失う。

老子は生と死の象徴を柔と硬でとらえましたが、

これに逆らうのが、堅い甲羅をもった亀です。

亀は堅い体でも長寿で、最高齢は175歳でギネス記録

に載っているそうです。

重い甲羅を背負っているので、ゆっくり動くしかない。

エネルギー代謝を減らし、穏やかに暮らしている。

重い体に合わせた柔軟な生き方が長寿に繋がる。

一方人間は、背負うものが大きく重くても、代謝を

落とさず忙しく生きるので、寿命を縮める結果になる。

加齢とともに体は堅くなっても、生き方を柔軟にすれば、

長寿になれるというヒントを老子と亀から教わりました。

 

有無相生

 

 

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