老子小話 VOL 936 (2018.10.20配信)

すべての動物は、種族のために

生きているのではなく、

自分自身の適応度増大のために

生きているのだ。

(日高義隆、「ネコはどうしてわがままか」)

 

今回も日高先生のお言葉を拝借しました。

今日の動物行動学による自然認識の基本とのこと。

適応度というのは環境適応性のことではなく、

自分自身の遺伝子をもった子孫をどれだけ

後代に残せるかということです。

自然界の厳しい掟を感じさせる言葉です。

オスはできるだけたくさんのメスに近づき、

自分の子供を産ませようと望む。

メスは近寄ってくるたくさんのオスの中から

一番丈夫そうなオスを選ぶ。

生存競争に勝ち抜く遺伝子をもつ子供を産む

ためである。

カエルがなぜ鳴くのかという章が面白い。

鳴くのはオスでメスは鳴かない。

オスは力の限り鳴き、メスに元気な証拠を

見せる。

メスは必死で鳴くオスの中から丈夫そうな

オスを品定めする。

セミが鳴き続けるのも同じ理由らしい。

人間からするとやかましい音に迷惑するが

生き物からすると自分の子孫を残すために、

命をかけてメスにアピールする叫びといえる。

一方、人間界ではメスがオスを選ぶ条件は、

タフさ以外に容姿や収入などが加わり、

つがい(夫婦)になる確率は減ります。

おまけに子供も自然界のようにすぐに自立

するわけでなく、何年も養育しなくては

ならないので、子供を作る意欲は減る。

自分の遺伝子を残すどころが、自分が生きる

だけで精一杯になる。

国家的にみると少子化の問題は、種族の存続

がかかっており、国民には自分の遺伝子を

残すことより、種族の遺伝子を産んでくれと

政府はお願いしているようです。

自然界ではいくら子供を産んでも、大半の

子供は他の生き物のえさになり死んでいく。

人間だけが科学技術により寿命が伸びていく。

自分が生き続けるため、子供を産まなくなる。

寿命の限界は、自らのDNAのなかに仕組まれて

いるという自然界の歯止めがかかる。

自然界の掟を知ることで、人間界の特異性が

見えてきます。

 

有無相生

 

 

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