老子小話 VOL 933 (2018.09.29配信)

企者不立、跨者不行。

自見者不明、自是者不彰。

(老子、第24章)

 

(つまだ)つ者は立たず、

(また)ぐ者は行かず。

自ら見(あら)わす者は明らかならず、

自ら是とする者は彰(あら)われず。

 

9月最後の回は老子をお届けします。

老子の中でも、好きな言葉の一つです。

「つま先立ちする者は長く立てない。

大またで歩く者は遠くまで歩けない。

自分の才能を見せびらかす者は

才能を認めてもらえない。

自分で自分の行動を正しいとする者は、

その正しさは現れてこない。」

自画自賛にいとまのない、どこかの国の

大統領に贈りたい言葉です。

無理をして背伸びをしても長続きしない。

私もこのことを身をもって体験しました。

年甲斐もなく、階段の上りを2段飛びで

駆け上がっていたところ、ある日踵が痛くなり

歩けなくなりました。

二三日休めば痛みはとれると思っていたら、

ますます痛みはひどくなり、医者に駆け込みました。

レントゲンを撮ってみたら、アキレス腱と踵の骨を

つないでいる部分が炎症を起こしていました。

若いつもりで駆け上がっていたのが、アキレス腱には

かなりの負担だったようです。

身体はうそをつきません。

無理をすればつけが回ってきます。

自分にあった行為や運動があることを身体は痛みを

もって教えてくれました。

歩けなくなると、普段忘れていた身体への感謝を

思い出します。

歩けるのが当たり前に考えていたのが、筋肉や骨、

それをつなぐ腱や関節がすべて働いて、ひとは

やっと歩けます。その一つが欠けても歩けない。

身体は気がつかない所で、自分の命を支えている。

自分の才能も自分が育てたものではない。

周囲の隠れた支えがあって初めて育ったもの。

それを忘れると自分の仕事や能力を自慢する

ようになる。

老子は、自分の仕事や能力を評価するのは自分

ではない。

真価は黙っていても外に現れるという。

自分を支えてくれる身体も周囲の環境も、

見えないところで自分を見守っている。

それを忘れないことだと老子は教える。

 

有無相生

 

 

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