◆老子小話 VOL
932 (2018.09.22配信)
もちのいい夫婦。---どちらも相手をとおして
何か自分個人の目標を達しようとするような
夫婦関係はしっくり行く、たとえば妻が良人を
とおして有名になろうとし、男が妻をとおして
愛されようとするような時。
(ニーチェ、「人間的な、あまりに人間的な」)
ニーチェと言えば、ドイツの大哲学者。
小難しい論題より、日常の経験的な話題に関する
言葉のほうが頭に入ります。
最近亡くなられた樹木希林さんがロッカーの裕也さん
と夫婦関係が続いたわけを聞かれたときの答えは
「わたしにとっての重石にするため。」でした。
愛情とかの前に、男勝りの自分の性格に歯止めを
かけるという目標が支えになりました。
この目標は、客観的に見て不条理でおかしくても、
本人が納得しているので長続きするわけです。
ニーチェの言葉によれば、妻が自分の知名度を
上げようとするために夫婦関係を続け、一方、
夫は妻を利用して、別の女性の愛を得ようとする。
これを打算的だと非難することはできません。
そもそも愛情こそ長続きしないもので、自分が
納得して決めた目標があるから、関係が長続きする
わけです。
資産家と結婚した女性が、夫の破産と同時に別れる
のは、目標達成が困難になったからです。
ニーチェの言葉は夫婦関係に限らず、人間関係一般に
拡張できます。
長続きする人間関係は、相手を通して自分の目標を
達しようとする関係です。
この目標は損得勘定ではなく、希林さんのように
相手を通して自分をコントロールするという、
そのひと固有の目標で十分です。
目標の実現のため、その人を支え、共に生きると
いうことが愛情なのかもしれませんが。
日常の経験的な話題から出発して、人間関係の
本質に迫るニーチェの言葉でした。
有無相生