老子小話 VOL 927 (2018.08.18配信)

得者時也、失者順也。

安時而処順,哀楽不能入也。

 (荘子、大宗師篇第六)

 

得るものは時なり。

失うものは順なり。

時に安んじて順におれば

哀楽も入るあたわず。

 

今回は、荘子より選びました。

私の好きな言葉です。

「我々が生命を得てこの世に出てきたのは

たまたま時を得たまでのこと。

その生命を失うのは去るべき順番が廻って

きたまでのこと。

時に安んじ、順番に逆らわないでいれば、

哀しみも楽しみもあろうはずはない。」

荘子の死生観を表わした言葉です。

自分がここに存在することが、偶然により

生じたことで、しかも生きる時間は限られる。

死ぬことに順番があると考えるのは、

納得感があります。

双子で同時に生まれても、死ぬときは別々です。

100歳まで生きると始めからわかっていれば、

詳細な人生計画が立てられますが、病気や事故で

中途で人生を終える場合もあります。

生きる時間はひとそれぞれ異なる。

それを、「失うものは順なり」という。

人生の試練はどうあろうとも、生きる時間を

どう使うかは個人の選択に任される。

生きる時間をどう使ったかが、ひとの一生です。

「時に安んじて順におれば」というのは、

無駄に時間を過ごすのではなく、時間の大切さ

を忘れずに一生懸命に生きることだと思います。

そういった生き方をすれば、哀楽の感情で心を

乱すことなく、限られた時間を存分に活かした

といえるでしょう。

荘子の言葉は、生命への畏敬を表わしています。

 

有無相生

 

 

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