老子小話 VOL 923 (2018.07.21配信)

子曰、人而無遠慮、必有近憂。

 (論語、衛霊公第十五)

 

子曰く、人にして遠き慮り無ければ、

必ず近き憂い有り。

 

日本全国猛暑に見舞われ、厳しい毎日ですが、

何とか頑張って乗り切りたいものです。

今回は、孔子の言葉をお届けします。

「人として、遠くまで配慮がないようでは、

きっと身近な心配事が起こる。」

この遠き近きは、距離的な遠近と時間的な遠近

を含みます。

しかも、遠くに見えていた問題が、関係性の

の中で、身近に迫ることを意味します。

トランプ大統領が始めた、全世界を相手にした

貿易戦争。

国内産業を活気づけるために、輸入品に高関税を

課するという政策を取りました。

目先ばかりを見て高圧的な政治・外交をすると、

いずれ身近な国民生活にインパクトが帰ってくる。

国内産業は、安い部品を海外から輸入して成り立つ。

国民は、海外からの安い消費財を輸入しているから、

豊かな消費生活ができる。

高関税をかけることで、国内産業の製品は価格があがり、

国民は高い商品を買わなければいけなくなる。

一国が他国の恩恵を受けずに、独立して生存することは

できない。

大国の長である米大統領が、近視眼的な政策ばかり続けて

いるのが、他国民として嘆かわしい。

大統領選からして、ロシアと共謀してフェイクニュース

を流して、対立候補にダメージを与えている。

移民の力で国力が恩恵を受けているのに、移民を排除する。

目を日本に転じると、日本国民も遠くまで配慮がない。

国会での多数支配を武器に、どんな法案でも通せる安倍内閣。

それを許しているのは、われわれ日本国民です。

参議院定数を増やし、一党独裁の足固めをする。

IR整備法を通し、カジノで収入を得ようとする。

カジノの周りは風紀が乱れます。

お金をもうけた人は、歓楽にそのお金をつぎ込む。

お金をすった人は、歓楽で憂さをはらす。

カジノには歓楽産業が集まり、マフィアの温床になる。

ラスベガスは砂漠の中にカジノを設け、大都市から

隔離しています。

日本の場合、国土が狭いので、どうしても都市近郊になる。

どの程度議論したのかわかりませんが、カジノ解禁は、

害あって益が少ない近視眼的な政策といえます。

そういった流れを許しているのが、残念ながら国民です。

遠き慮りをしないで、選挙棄権や投票をしているため、

身近に憂いが迫ったときに慌てるわけです。

遠い先の問題と考えていた事が、身近な問題になる。

災害もまた同じことで、備えを怠ると身近に迫る。

先を見て今を考える、これは孔子の大事な教えです。

 

有無相生

 

 

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