老子小話 VOL 918 (2018.06.16配信)

大成若欠、其用不弊。

大盈若沖、其用不窮。

(老子、第四十五章)

 

大成は欠くるが若く、

その用は弊(すた)れず。

大盈は沖(むな)しきが若く、

その用は窮まらず。

 

今回は老子の言葉をお送りします。

「本当に完全なものはどこか欠けた所があって、

その働きは衰えるところがない。

本当に充満したものは空っぽであるようでいて、

その働きは尽きることがない。」

100%頑張っていると目先のことしか見えず、

周りのものが見えなくなる事がある。

60%の力で取り組めば、突然の変化に対応でき、

仕事以外にも目が届くようになる。

老子の考えの基本は、無という空間の大切さを

認識しようというものです。

頭に知識を目一杯詰め込むと、それを忘れない

ようにするのが負担になり、新たな知識が入る

ゆとりがなくなります。

日本庭園には水琴窟(すいきんくつ)という

装飾があります。

瓶を地中に埋め、瓶の空洞に水滴を落とし、

反響する音を聞くものです。

音は、瓶の底にたまった水量で変わります。

無の空間をうまく利用して、時の移ろいと

静寂の中における音の変化を楽しむ仕掛けです。

デジタルCDだと毎回同じ音しか聞けませんが、

アナログレコードはレコード針が作った溝のきず

が、時の移ろい音の中に感じる事ができます。

プラスチックは腐らない材料として使われますが、

今や海底にプラスチックがたまり、生態系を侵して

います。

自然界では当たり前だった、腐って分解し土壌に

再生するサイクルが図れなくなる。

不完全さを保つことで、永遠に変化することが

可能になる。

人間も同じでしょう。

老化の遺伝子が寿命を決め、自然は永遠の生命を

与えない。

社会が固定化することを防ごうとして、遺伝子の中

に不完全性を持ち込んでいる。

ということで、老子の言葉には普遍的な真理が

現れているように思われます。

 

有無相生

 

 

戻る