老子小話 VOL 914 (2018.05.19配信)

知足不辱、知止不殆、

可以長久。

(老子、第四十四章)

 

足るを知れば辱しめられず、

止まるを知れば殆うからず。

以って長久なるべし。

 

今回は老子の長生き論です。

一言でいうと、自然に逆らわずに生きて

いれば長生きできるというもの。

自然に逆らうとは、満足することを忘れ、

踏みとどまることを忘れ、欲のおもむくまま

生きることです。

サバンナのチーターは、あんなに足が速くても、

狩りをするのはお腹が空いた時です。

獲物を捕らえてお腹が満たされれば、あとは

寝ています。

これが人間なら、足の速さにまかせて獲物を

取りまくり、いずれ資源枯渇を招きます。

自然界の人間以外の生き物は、足るを知り、

食べ過ぎの肥満はありません。

人間と生活を共にするペットの犬や猫は、

悲しいかな人間の生活に同化し、肥満になる

こともあります。

踏みとどまるのを忘れるのは、今の世界情勢を

見れば明らかでしょう。

原発事故を起こしても、原発依存を変えない政府。

踏みとどまることは、新たなエネルギー産業を創生し、

未来に備えること。

人間は勢いで突っ走る習性があり、一度走り始めると、

途中で立ち止まり政策を見直すことが難しくなる。

政府ばかりじゃありません。

我々だって酒やギャンブルにはまると、途中で止める

のが難しくなる。

会社人生も一度始めると、途中で休止して人生を

振り返る事ができず、定年後慌てるようになる。

自然界で見られるこの踏みとどまり現象は何でしょうか。

地球が太陽の周りを回る公転現象がその一つでしょう。

公転するスピードで生まれる遠心力と太陽の引力がうまく

釣り合っているので、太陽の恩恵を受けながら安心して

地上の生活が送れるわけです。

遠心力の方が大きければ、太陽から離れ地球は冷却します。

引力の方が大きければ、太陽に近づき地球は加熱されます。

今の地球環境を保証しているのは、公転運動のお陰で

地球が太陽との距離をとどめているからです。

人間関係にたとえると、人間関係が濃いと相手の影響を

受けやすく、逆に薄いと社会生活がうまく行かなくなる。

つまり、近すぎず離れすぎずある距離を保って、人間関係を

保つのが一番自然に近い生き方になるようです。

その意味でも、老子の言葉は長続きする社会生活の送り方

を示しているようです。

 

有無相生

 

 

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