◆老子小話 VOL
913 (2018.05.12配信)
往者屈也。來者信也。
屈信相感而利生焉。
(易、繋辞下伝)
往くとは屈するなり、
来るとは信(の)ぶるなり。
屈信相い感じて利生ず。
今回は尺取虫の原理です。
易とは未来を占う手段です。
吉と出ても凶と出ても、一喜一憂せずに、
心の準備を怠らないことです。
易の世界観は、陰陽の循環運動です。
吉がずっと続かないように、凶も続きません。
景気の運動と同じです。
「往く(去る)とは永久に往ってしまうのではなく、
一時的に身を屈めることである。
来るとは伸びることである。
屈することと伸びることが相まって、利益が生じる。」
尺取虫も縮んで伸びることを繰り返し、前進できる。
昔のひとは、自然界の現象を注意深く観察し、
教えを汲み取り、易を編み出しました。
変化が前進の証ということに気づきました。
老子にも似た教えがあります。
運に見離され挫折しているときが、
見えなかったものが見えてくる貴重な時間。
それを足がかりに、新たな方法で挑戦する。
それが前進するきっかけとなる。
易では、上の言葉の後に、
「危うきものは、その位に安んずる者なり。
亡ぶるものは、その存を保つ者なり。
乱るるものは、その治を有(たも)つ者なり。」
が出てきて、地位や権力にしがみつく者が、
危険人物で世の中を乱し滅びていくという。
米朝の大物は朝鮮戦争の終結と恒久的な核放棄
という歴史的業績を成し遂げた後、その地位に
しがみついているのでしょうか。
中露の大物もその位を保とうとしているので、
世界を不安定にする要因は常に存在するという
のが、人類の歴史の真実なのかもしれません。
有無相生