老子小話 VOL 910 (2018.04.21配信)

知成之必敗、則求成之心、不必太堅。

(菜根譚)

 

成の必ず敗るるを知らば、

成を求める心、必ずしも太(はなは)だ

堅からず。

 

花粉症がまだ治まらず、マスクを手放せません。

今では黄砂やPM2.5が追い討ちをかけ、症状を

ひどくしているようです。

くしゃみをしながら、菜根譚のページをめくり、

この言葉を選びました。

「できあがったものはいつか必ず壊れることを

知っていれば、できあがることを求める気持ちは

それほど強くはおこらない。」

なんともネガティブな言葉です。

この言葉は、次に来る言葉の前置きになっています。

次の言葉は、成を生に置き換えます。

生あるものは必ず死を迎えるから、生き残ろうと

必死になることもない。

生者必滅の教えです。

公園の砂場で子供が砂山を作って遊んでいます。

砂山は水をかけると崩れてしまいます。

崩れても崩れても、遊びをやめません。

何かを作ろうとする過程が面白いからです。

プラモデルを作っているときと同じです。

この成が、地位や富という世俗的な成功に

なると、菜根譚の言葉は生きてくる。

世俗的な成功はあの世に持っていけない。

成功よりも、生きているうちに何をするかが

大事ということになります。

だから成功に執着することはないといえば、

何となくわかります。

子供の砂山と同じで、砂山を作ろうとする

気持ちは確かに強い。

作った砂山を維持しようとすることは空しく、

作る過程を楽しめればよい。

生を授かったこの身体は、作ったのは自分ではなく、

親や先祖を含む自然です。

自然を主体にすれば、作ったものを壊すことに

思い入れはない。

老子の「天地不仁,以萬物為芻狗。」にあるように、

天地自然は、人間をわらの犬のように壊してしまう。

菜根譚の上の言葉は、創造主の自然から見た真理です。

自然に作ってもらった人間は、その真理を忘れず、

死を迎えてもあたふたしない。

菜根譚の言葉が、ネガティブからポジティブに変わる

瞬間が最後に訪れました。

 

有無相生

 

 

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