◆老子小話 VOL
909 (2018.04.14配信)
善戦者、求之於勢、不責於人。
(孫子、勢篇第五)
善く戦う者は、これを勢に求めて、
人に責(もと)めず
今回は孫子から言葉を選びました。
4月も半ばとなり、新生活に少しずつなじんで
くる時期かと思います。
人生を長丁場の戦いとたとえるなら、戦いをうまく
やるコツを孫子は教えてくれます。
「戦いの上手な人は、戦いの勢いによって勝利を
得ようとするもので、人材に頼ろうとはしない。」
いくら優秀な人材を育て、勝負に当たらせても、
本人に勢いがなくては勝てない。」
サッカーの試合を見ていても、このことはすぐ
わかります。
選手ひとりひとりは優秀でも、攻撃に勢いがない
と点は入らない。
勝負というのは、勝とうとする気持ちに勢いが
つかないと最後のせめぎ合いで敵を出し抜けない。
孫子の言葉に続きがあって、
「人材を選び出して、石がころがるように
勢いに乗らせることが必要になる。」
監督は、誰に勢いがあり、誰をフィールドに
出せばチームが勢いづくかを判断する。
いくら技があっても、その時に勢いがなければ、
試合に出してもらえない。
だから試合に勝つには、どう勢いをコントロール
するかが大事になる。
敵が勢いづいてきた時は、それをどうしのいで、
味方の勢いにつなげるか考える。
孫子の教えは、戦いの先頭に立つリーダーの心構え
といってもよいでしょう。
戦いが人生となると、リーダーは自分しかいない。
勢いをどうコントロールするか決めるのは自分です。
勢いがかげったときは、気分転換してしのぐ。
勢いの波に乗ったときは、集中して戦いに没頭する。
その先に勝利の女神が輝くかもしれない。
孫子に勢篇があるくらいなので、勢いが勝敗に
大きく影響することを物語ります。
人生の分岐点で、行くのか止まるのかを決める
のも確かに勢いですね。
進んだときのデメリットをどう分析しても、
進まない限り、それは予想に止まります。
戦いに勝つというのは、進んだあとの結果。
兵隊の人材に頼るというのは、勝利の要因
に目を奪われて、勢いを忘れることです。
勝負において実力以上の力が出るというのは
「勢い」のなせる業ということになります。
老子的立場からいうと、勢いがない時間も
決して無駄な時間ではなく、勢いに乗るため
の助走路と考える。
勢いには限りがあり、いずれ勢いを失う。
今勢いがない方が、勢いに乗る機会を持つ。
勝った負けたに一喜一憂してはいけない。
そういうポジティブな思想です。
孫子を孫悟空とすれば、老子はお釈迦様に
なりますね。
有無相生