老子小話 VOL 908 (2018.04.07配信)

風に散り風吹たえて落花哉

(蕪村)

 

4月に入って、桜の俳句をお届けする前に

こちらでは散りかけています。

温暖化現象なんでしょうか、最近は入学式

の前に桜の見ごろを過ぎています。

今回は、蕪村の句をお届けします。

桜の見所は、咲く美しさより散る美しさ。

風に吹かれて桜の花は散りますが、

風が吹き止んでもはらはらと散っていく花。

桜にこのような情を載せるのは、日本人の感性

といえると思います。

自然の風景の中に、移り行く季節とそこに生きる

ひとの一生を見る。

花のように美しさを湛えていた年齢を過ぎて、

老いていく過程にも別の美しさがある。

咲いている時の美しさは外面的な美しさ。

老いていく美しさは生きた証を心身に刻む美しさ。

老いて死ぬことは「散る」こと。

死を落花と呼ぶ。

風は死をもたらす外的要因です。

ガンや心筋梗塞のような病気や不慮の事故。

風に散るのは一つの運命。

風がなくても、死の遺伝子により自然に散る

のも一つの運命。

どのように散っても美しい。

「散る」美しさとは何でしょうか?

自然の流れの中で、次の世代に生命や使命

を引き継ぎ、安堵の中で最後を飾る美しさ

ではないでしょうか。

桜の頃に亡くなるのは最高のエンディング。

自分の死を散る桜に見る。

送るひとにとっては、花は塞ぐ気持ちを癒し、

散る美しさを感じさせる機会を与えてくれる。

私も死ぬなら桜の頃と願っております。

蕪村の句でここまで思いを巡らす事ができました。

 

有無相生

 

 

戻る