老子小話 VOL 899 (2018.02.03配信)

道無横経 立者孤危

(碧眼録)

 

道に横経(よこたて)無し,

立つ者は孤危なり。

 

今回の言葉は、禅語をお届けします。

経は緯度経度の経で、縦方向の意味です。

「縦横に走る脇道がない一本道に

立つ者は危険である。」

一本道というのは、前に進むしかない。

つまり、選択肢のない道である。

たとえて言うなら、高速道路の出口付近で

トラックが雪のため動けなくなり、その後に

続く車が10時間も立ち往生するようなもの。

一般道なら脇道に抜ければ、立ち往生はない。

就職の場合なら、大企業に就職すると定年まで

一本道で、業務内容はずっと変わらない。

会社が破綻するとつぶしが効かず、再就職も

ままならない。

会社経営なら、新規事業という脇道を作らず、

伝統事業の一本道を歩む危険を言う。

伝統事業の衰退は経営危機になる。

禅宗のお坊さんが、こんな言葉を考えるのは

ちょっと不思議ですが、既存の修行のやり方を

信じてひたすら修行する危険に気づいたのかも。

老荘的には、生命の進化に答えは見えると考えます。

進化系統図より、進化が縦横に枝分かれして進み、

決して一本道ではなかったことがわかります。

進化が人類に至ったのも、縦横の分岐で生命の危機

を乗り越えてきたからです。

自然の成り立ちを考えると禅語がしみじみ理解できる。

道を究めるというのは、ずっと同じ道に固執すること

ではなく、脇道をこしらえながら生き続けることの

ように思えます。

日本の道も、財政健全化を後回しに経済成長の一本道

に固執していいのでしょうか。

経済成長すると国の借金の金利も増加し、成長すれば

財政健全化が進むものではありません。

借金体質そのものを改める意思がないと、次世代に

借金を負わせる状況は変わりません。

 

有無相生

 

 

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