老子小話 VOL 894 (2017.12.30配信)

反者道之動。弱者道之用。

天下萬物生於有、有生於無。

(老子、第四十章)

 

反は道の動なり。弱は道の用なり。

天下の万物は有より生じ、有は無より生ず。

 

今年も残すところあと一日となりました。

今年最後の老子小話は老子で締めましょう。

「原点に戻ることが道の動きであり、

柔弱であることが道の働きである。

万物は陰陽の気から生じ、気は無から生じる。」

2017年もいろいろありました。

桐生選手が100メートルで10秒の壁を破り、

藤井四段がデビュー後公式戦29連勝の新記録

を打ち立てました。

記録というのは破られるためにあるとはいえ、

集中力、精神力、体力、環境などあらゆる条件が

そろわないと壁は越られません。

技を磨くのも大切ですが、技に耐えうる体を

鍛えることも、集中力維持のための基本です。

老子の言葉は、技を積み上げなくても、技の基本に

なる体の動きが柔軟になれば、技は減ってくると

いっているようです。

技にこだわると、体の動きはぎくしゃくします。

道は勝負(挑戦)の道に通じます。

その理由を万物の生成の流れから説明します。

万物は気から成り立ち、気は無から生まれる。

現代科学から言えば、万物の根源は元素で、

元素の根源は素粒子です。

素粒子の根源はビッグバンで、ビッグバンの

根源は無です。

人類の進化は、技つまり技術を高度化して、

記録に挑戦する歴史です。

挑戦する人間の眼は、技の向上に向きがちです。

しかし技の実現には、進化で培われた体が技を

支えることが必要です。

たとえるなら、レーシングカーを運転するには、

高速走行に伴う重力に耐えうる体が不可欠です。

従って道は、人類が技と体の両方を進化の過程で

獲得したように、進化の原点に立つことを基本にし、

しかも柔弱に事態に対応することで、記録に挑戦

すべきだといっているようです。

老子の考えの基本は、進化の歴史から学ぶ視点です。

この視点は普遍的であり、来る年にも通用します。

最後に、本メルマガのご愛顧に対し、読者の皆様に

厚く御礼申し上げます。

よいお年をお迎えください。

 

有無相生

 

 

戻る