老子小話 VOL 885 (2017.10.28配信)

狐火や 髑髏に雨の たまる夜に

(蕪村)

 

ハロウィンが近くなり、街には仮装の人が

溢れます。

ハロウィンが日本ではやり始めたのはいつ頃で

しょうか?

そもそもハロウィンはケルト人のお祭りで、

10月31日を一年の終わりと考え、死者の霊が家族を

訪ねて来るので魔よけの焚き火をしたのが始まりです。

今回の言葉は、蕪村が日本版ハロウィンの句をお届け

しました。

ハロウィンにはジャック・オー・ランタンといって、

大きなかぼちゃを顔の形にくりぬき、ろうそくを灯し、

家の玄関に飾ります。

一方、蕪村のハロウィンは、頭蓋骨の中に青い火が

ぼうっと灯り、雨がたまっています。

狐火は、「夜、人がともしていないのに火が燃える現象」

をいい、頭蓋骨の中で自然発光し、目と鼻と口の穴から

弱い光が漏れてくるので、怖さは格別です。

更に雨が降って、頭蓋骨の窪みに雨がたまり、青い光が

反射して揺れています。

これが日本版ジャック・オー・ランタンです。

かぼちゃの頭はどこか滑稽ですが、頭蓋骨となると、

トリック・オア・トリートの子供たちも近寄れません。

蕪村の頃の旅は、野原で野垂れ死にする人もいて、

死体はそのままにされ、夜雨にあたる頭蓋骨に出会う

ことがあったのかもしれません。

この頭蓋骨に明かりが灯り、道しるべになってくれる

と有り難いのにと蕪村は思ったのでしょう。

野原にろうそくは灯るはずはないので、ここは狐火の

力を借りようと思いつきました。

人は死んでも、死骸ですらひとの役に立つ。

髑髏の道しるべとはなんとしゃれた思いつき。

怖いはずの髑髏が人助けをしています。

「そっちに行ったら道に迷うよ」と旅人に語りかける。

蕪村もハロウィンの夜に、「今晩もお世話になります」

と死者の霊にお礼を言っているようです。

日本の霊は人助けする霊、西欧の霊は怖い霊。

蕪村の句から、日本版ハロウィンを思い描いてみました。

 

有無相生

 

 

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