老子小話 VOL 881 (2017.09.30配信)

ひとやりの道ならなくに

おほかたはいきうしといひて

いざ帰りなむ 

(源実、「古今和歌集」)

 

今回は、古今和歌集より歌を拾います。

「ひとやりの道」とは、人に行かされていく旅。

「私の旅は、ひとに行かされる旅じゃなく

自分で選択していく旅だから、

行くのがつらいと言って途中で帰ってしまおうか」

かなり軟弱な旅のように見えます。

でも、「いきうし」と思うのは、「おほかた」つまり

世間の人々です。

世間の人が「行くのがつらい」と思うのであって、

私はそんな思いに負けて途中で帰るわけにはいかない。

そんなふうに考えているように思えます。

自分で行こうと思い立った旅だから、いつでも途中で

断念できると考えるか、

反対に、自分で決めた旅だから、辛くても途中で断念

できないと考えるか、詠み手(源実)の気持ちになって

考える楽しみを与えてくれる歌です。

「ひとやりの道」じゃないからという思いが、そのあと

旅への思いにどうつながっていくか?

芭蕉の「奥の細道」の旅立ちにも、

「前途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻のちまたに

離別の泪をそゝぐ。 行春や鳥啼魚の目は泪」

と記されるように、途中で帰るわけに行かないという

覚悟と、大勢に見送られて後ろ髪を引かれる思いが

錯綜している状態を詠ったとみたほうがよいかも

しれません。

今回の衆議院選挙で、民進党の希望の党への合流は

自民による「ひとやりの道」かもしれませんが、

自分で選択した以上、政権奪取に向け一丸になって

闘って欲しいと思います。

 

有無相生

 

 

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