◆老子小話 VOL
864 (2017.06.03配信)
企者不立、跨者不行。
(老子、第二十四章)
企(つまだ)つ者は立たず、
跨(また)ぐ者は行かず。
アメリカが地球温暖化対策のパリ協定を
離脱したニュースが話題です。
地球温暖化は気のせいだというトランプ
大統領の意見に従った決定でした。
大国がなりふり構わず国益優先をとる姿は、
まさにつま立つ者です。
遠くを見ようとしてつま先立ちしても、
長く立ってはいられない。
またぐ者とは、ひとより少しでも先を行こう
として大股に歩いても遠くには行けない。
無理をして背伸びしても長く続かない。
目先の利益のためにパリ協定を離脱しても、
長い目で見ると技術的な遅れを招き、国際的な
信頼を失うことになり、米国の損失は明らかです。
このようなトランプ大統領の振る舞いに対して、
老子の上の言葉を贈りたいと思います。
化石燃料などからの温室効果ガスが増えることで
気温が上り、氷河の融解で海面が上昇するのを
抑えようとするのが温暖化対策です。
車はガソリン車からハイブリッド車、電気自動車へ
移行し、クリーン環境を目指す流れにあります。
発電も、火力・原子力から風力・太陽光などの
クリーンエネルギーに移る流れにあります。
大統領の発言に従い、環境対応しない車を作って
いては、アメ車はますます売れなくなります。
幸い、米産業界はクリーン環境のための開発は続ける
と言っていますが、国のサポートがなければ拍車は
かかりません。
これからの国際社会は、大国に方向付けをまかせる
のではなく、EUのように国家間の連携を図ることで、
理想を実現していく流れになると思えます。
「自ら伐(ほこ)る者は功なし、
自ら矜(ほこ)る者は長ぜず」
と老子は続けていう。
自分を売り込もうとする者は誰も評価せず、
自分の才能を鼻にかけ尊大な者は長続きしない。
老子の昔も、今の世界と変わらなかったようです。
有無相生