老子小話 VOL 863 (2017.05.27配信)

塞其兌、閉其門、終身不勤。

開其兌、濟其事、終身不救。

(老子、第五十二章)

 

その兌(あな)を塞ぎ、その門を閉ざせば、

終身勤(つか)れず。

その兌を開き、その事を済(な)せば、

終身救われず。

 

今回は、老子の言葉です。

(あな)は、人間の感覚器官のことです。

身体の表面は皮膚におおわれていますが、

そこに穴をあけて外界の刺激を検知します。

目は映像を、耳は音声を、鼻はにおいを、

口は味を検知します。

検知した信号を脳で処理し、どういう行動を

とればよいか判断します。

感覚器官を全開にし、検知信号で脳が満杯に

なると、脳は判断に疲れてきます。

たとえて言うなら、スマホをじっと見つめ、

イヤホンをし、指を発作的に動かして、

ゲームアプリに没頭している人です。

それを一生続けていると救われません。

そこで感覚器官をふさいで外界の刺激から

脳を一時遮断して、脳に安息を与えてみる。

そうすると脳はまた活力を得て一生疲れません。

座禅を組めば、感覚器官をふさいで脳を休ませて、

心をリフレッシュすることができます。

睡眠も、脳を休ませる時間です。

老子は、感覚器官を通して人間の欲望は膨らみ、

それに振り回されると心は疲弊すると考えました。

現代はネットを通して情報は溢れ、市場はモノで溢れ、

感覚器官も脳もその処理に疲れ果てています。

たまには感覚器官を遮断して、生命本来が持つ

自律的なリズムに心身をゆだねてみる。

これが、老子の提案する長生きの秘訣です。

 

有無相生

 

 

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