老子小話 VOL 858 (2017.04.22配信)

等閑に 香たく春の ゆふべかな

(蕪村)

 

今回は、蕪村の句をお届けします。

17文字の小宇宙ですが、春のアンニュイな

夕べをうまく言い表していると思いませんか。

4月に新たな生活が始まり、今頃は、それに

少し慣れてきて緊張もほぐれ、退屈と憂鬱が

混ざり合った気分に変わってきます。

そんな夕べに、香を焚いて目を閉じ、こころを

リラックスさせるのもよいかもしれません。

香は、煙の浮遊とかおりの浮遊を同時に楽しむ

ことができます。

気の流れに従って香の煙は漂い、最後に気に

溶け込んで消えていく。

一方、香のかおりは煙が消えても、気の流れに

乗り鼻孔から肺に沁み込んでくる。

句の頭に置いている「等閑」は「なおざり」

と読みます。

意味は、いい加減にすることで、深く考えず

なりゆきにまかせることです。

何か目的があって香を焚いたわけでなく、

そのときの気分で何気なく焚いていた。

「等閑」に、春の夕べに思うひとの心を

のせているのが面白いなあと感じました。

「等閑」は「等間」とも書き、等しい間隔で

時間が流れれば、退屈にもなってくる。

そんな時、ひとは何をするのか?

蕪村の句はそのヒントを与えてくれます。

 

有無相生

 

 

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