老子小話 VOL 855 (2017.04.01配信)

為学日益、為道日損。

損之又損、以至於無為。

(老子、第四十八章)

 

学を為せば日々に益し、

道を為せば日々に損す。

これを損して又た損し、

以って無為に至る。

 

4月は、入学式・入社式と環境が変わる

月でもあります。

環境が変われば、学びの機会が増えます。

早く環境に慣れて人間関係を作っていけば、

少なくとも環境変化からのストレスは減ります。

今回の老子の言葉は、4月にふさわしい言葉です。

「学んでいけば、知識は日につれ増していく。

道を修めていけば、知識は日につれ減っていく。

どんどん減らしていって、ついに無為に至る。」

学校生活を例にとれば、進学して学校が変われば、

通学路から同級生まですべて変わり、勉強の内容も

変わります。

日々が学びの連続で、知識はどんどん増えます。

しかし、新しい環境に慣れてくると知識は身につき、

ことさら意識しなくても、からだが動くようになる。

これは、覚えなくてはならない知識が減っていくのと

同じです。

このことを、学生の「道」を修めると老子は言います。

最後には無為に至ると言いますが、これは理想です。

何も考えなくても、自然に頭が働きからだが動く、

無為の境地はやはり理想です。

数学で言えば、公式や定理を覚えるのが、知識を増やす段階。

問題を見ただけで出題者の意図がわかるというのが、

知識が減っていく段階です。

問題に同化できるので、解法に使う公式や定理は、自由に

選択できるようになります。

無為の境地は、全体を見渡せる視点を持つため余計な知識

は不要で、場面に応じた対応が自由に取れます。

そこまで行けないにしても、最小限の知識を駆使して

ものごとの仕組みを自分で考え、仕組みにそって動けば、

余計なエネルギーを使わず、無理が減っていきます。

それが無為に近い境地です。

働き方改革が叫ばれますが、生産性を高める働き方は、

無駄なことをしない働き方です。

長時間の会議や長々とした報告書。

結論に至る選択判断をいかに余計な知識に基づいている

かの証明です。

ものごとの仕組みが見えていれば、判断に必要な知識は

は限られてきます。

働き方改革に一番必要なことは、残業を減らすことでも、

賃金格差を減らすことでもありません。

無為を徹底することだと老子は教えます。

無為を徹底する結果、残業は減り、仕事の質は高まり、

質に対し賃金が決まるなら賃金格差は減っていきます。

老子の考えは古いようで新しいのは、真理を衝いている

からです。

 

有無相生

 

 

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