老子小話 VOL 851 (2017.03.04配信)

上善若水。

水善利萬物而不爭、

處衆人之所惡。故幾於道。

(老子、第八章)

 

上善は水の若し。

水は善く万物を利して而も争わず、

衆人の悪(にく)む所に処る。

故に道に幾(ちか)し。

 

老子思想の根本原理を教える言葉です。

老子は、道(タオ)を目指す思想ですが、

道に一番近いのが、水であるという。

水は生命を支える。

人体の約60%は水からできていて、

水(尿)によって体の老廃物を排出しています。

水(汗)によって体温調節を図ります。

水は皮膚細胞に潤いを与え、外界から体を守ります。

水は表だって役目を主張せず、陰で生命を支えます。

「水が争わない」とは、おれがおれがと

自分を目立たせ、他のものと競争しないことです。

皆が嫌う低きに流れ、見えないところで黙々と

自分の役目を果たしている。

そんな水の働きが、道に近いという。

水は、透明で自分の色はない。

従って、その存在すら忘れることもある。

でも水がなくなった途端、生命は生きていけない。

人間関係で言えば、思いやりのようなもの。

思いやりが人間関係を陰で支える。

思いやりはさりげなくするから潤滑油となる。

自己主張を始めると争いの種になる。

でも思いやりを失うと、人間関係は長くは続かない。

水のように生きるのは難しいけれど、

水のように生きると日々が楽しくなる。

 

有無相生

 

 

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