老子小話 VOL 847 (2017.02.04配信)

故形人而我無形、則我專而敵分。

(孫子、虚実篇第六)

 

故に人を形せしめて我に形無ければ、

則ち我はあつまりて敵は分かる。

 

今回は孫子の言葉をお届けします。

「敵にはっきりした態勢をとらせ、

こちらでは態勢を隠して無形であれば、

こちらは集中し、敵は分散する。」

一言で言えば、兵力が分散した敵と

集中した兵力で戦えば勝機があるという。

人間関係で言えば、相手の考えていることを

明らかにし、こちらの考えは明らかにしないで

交渉に当たれば有利に事を運べる。

相手はこちらが何を考えているかわからないので、

いろいろな場面を想定し、対策に悩むことになる。

いろんな対策に気をとられると隙が出てくる。

一方、こちらは相手の考えが見えているから、

そこを集中的に衝いて攻撃できる。

スリや引ったくりは、獲物がどこにあるかはっきり

見えるときに襲ってくる。

体を触ってきたり、飲み物を衣服にかけたりして、

われわれの注意を分散させる。

狙われる側からすれば、財布の場所を特定できない

ように注意するだけで狙われる可能性は減る。

孫子は、戦いに勝つための王道を示す。

しかし、人間関係を築くには、まず相手の信頼を

得なければならない。

相手に自分の形をはっきりと示して、自分を理解して

もらって始めて相手の信頼を得る。

何を考えているかわからない人間は信頼を得られない。

しかし世間では、人間関係を維持しながら、ある意味の

戦いに勝たねばならない。

ある場面では形を明らかにし、ある場面では形を隠す。

器用な人間には上手くこなせるが、不器用な人間は疲れる。

孫子の言葉は無形の用を説くが、使いこなすのは容易でない。

 

有無相生

 

 

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