老子小話 VOL 846 (2017.01.28配信)

めしつぶで紙子の破れふたぎけり

(蕪村)

 

今回は生活に密着した蕪村の句をお届けします。

句の味わう前に、言葉の説明をちょっと。

「紙子」とは、紙でできた粗末な防寒着です。

今で言えば、ユニクロのライトダウンのようなもの。

蕪村が生きた江戸時代には、紙で作った軽い羽織を

老人は着ていました。

それを長く着ていると破れてくるので、ごはんつぶで

修復しましたという句です。

紙製の服なので、ごはんつぶでくっつけることができる。

まさにそんなエコ生活を当時は送っていました。

この句を出会ったとき、笑ってしまいました。

そのわけは、現代も同じことが起きているからです。

うちのかみさんがライトダウンを長年愛用していて、

それが擦り切れ、羽毛がなかから出てくるので、

バンドエイドでふたをして着続けています。

紙子とダウンの違い、めしつぶとバンドエイドの違い

はありますが、エコの気持ちは時代を越え同じです。

また、蕪村の句には貧乏暮らしの気楽さがにじみます。

かみさんも歳をとると風体にこだらわず、気楽に修復し

ものを長く使うようになっています。

貧乏暮らしも老年暮らしも気楽さは変わりません。

こだわるものが減ってくるというか無くなってくる。

とりあえず何とか生きていれば、ときに面白いことに

めぐり合えるかもしれないという気楽さです。

自然と老荘生活に近づいているのかもしれません。

右肩上がりの成長というより両肩下がりの現状維持

という感じでしょうか。

蕪村の句に、ほんわかなライフスタイルが溢れます。

 

有無相生

 

 

戻る