老子小話 VOL 845 (2017.01.21配信)

子曰、人而無遠慮、必有近憂。

(論語、衛霊公第十五)

 

子曰く、

人にして遠き慮り無ければ、

必ず近き憂い有り。

 

本日未明トランプ氏が米大統領に就任しました。

相変わらず「米国第一主義」を掲げ、TPP離脱を

表明しました。

彼の新政府スタートに当たり、孔子さんは2500年

程前に、いい言葉を語っています。

「人として、遠い将来のことに配慮がなければ、

必ず間近に心配事が待っている。」

大国は世界の将来を見据え、何をすべきか考え行動する。

自由貿易はそもそもアメリカが、自国の農産物や先進技術

の製品を世界に輸出しようとして唱えたものです。

日本は、それらの製品から日本の産業を守ろうとして、

保護政策を採ってきたのを何とか折り合いをつけて、

自由化の波に乗れるようになったわけです。

そのうち、アメリカの産業の中心が情報産業にシフトし、

かつて主力だった自動車産業や鉄鋼業が日本や中国に

追い上げられ、製造業が衰退していきました。

自由貿易体制の中でアメリカだけが貧乏くじを引いている

というのは間違いで、職を失った労働者に雇用創出する策

を怠ったのが、真の原因といえます。

自由の恩恵にあずかったのは、米国と相手国の双方です。

移民締め出しも、アメリカがそもそも移民の国だから、

様々の文化が融合し、今の成長力を生んでいることを

忘れた考えです。

トランプ氏の父親はドイツ農村からの移民の子で、母親は

スコットランドからの移民です。

米国自体が、移民が先住民を虐殺して建国した国です。

ハリウッド映画では先住民が悪者に描かれますが。

「遠きをおもんばかる」とは、歴史的な背景を配慮する

ことで、それを忘れると利己主義に陥ります。

アメリカの建国の精神を忘れることになります。

その配慮がないと間近にいろいろな問題が現れると

孔子は予言します。

また「遠きをおもんばかる」とは、米国から遠く離れた国

への配慮でもある。

トランプ氏は、パレスチナ自治区のエルサレムに米大使館

を移設しようとしていますが、これはイスラエルの首都を

エルサレムと認める行為です。

これはパレスチナ和平交渉に水をさし、力でパレスチナ民族

を押さえ込もうとすることになります。

紛争の火種を自分で作っておきながら、それを米国第一主義

のもと、力で制圧しようとすると9.11のように自国の憂い

となって跳ね返ってきます。

ビジネスマンは短期主義で打算的な行動をとりがちです。

トランプ氏にはビジネスマンを忘れ、政治家として孔子の

言葉を肝に銘じて欲しいですね。

 

有無相生

 

 

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