老子小話 VOL 843 (2017.01.07配信)

天下神器、不可爲也、不可執也。

爲者敗之、執者失之。

(老子、第29章)

 

天下は神器、為すべからず、執(と)るべからず。

為す者はこれを敗り、執る者はこれを失う。

 

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

2017年も老子で始めたいと思います。

「世界は不可思議な器である。

何かをしかけることはできず、

またつかまえることもできない。

しかけようとするとかえって害する。

つかまえようとすると失うことになる。」

世の中を自分の力で動かせると思う人が必ずいます。

その一人が、次期米大統領のトランプ氏です。

彼のTwitterでつぶやく一言一言がニュースになります。

トヨタが米国外に工場を作って米国に車を輸入する場合、

高い関税を課すと脅しているのが最近の話題です。

トヨタからすれば、安い車を米国市場に届けるために

労賃の安いメキシコに工場を作ろうとします。

トランプ氏は、労働者が高い車を買うか買わないかは

二の次で、労働者の財布にお金を届けるのが先決とする。

トランプ氏が、世界を権力で動く単純な器とみているか

疑問ですが、言動だけをみると恐ろしく単純にみえます。

反省の意味をこめて、老子の言葉を捧げます。

世界は複雑な関係性の中で動く。

その世界を単純な関係性でとらえて操作すると、

狙った目的と反対の効果が現れてくる。

ある程度自然の成り行きにまかせ、その効果を見定め、

うまく行かなかったら別の手を考える位のおうようさ

を老子は求めます。

大統領に就任する前に盛んにつぶやきますが、就任後、

実際一転してどのように行動するのか、興味が湧きます。

 

有無相生

 

 

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