老子小話 VOL 835 (2016.11.12配信)

善勝敵者不與。

善用人者爲之下。

(老子、第68章)

 

善く敵に勝つ者はともにせず。

善く人を用うる者はこれが下となる。

 

トランプ氏の米大統領の誕生は、

今週のビッグニュースでした。

政治経験が全く無くても、選挙民に迎合すれば

大統領になれることを実証した選挙でした。

移民の不法流入を防ぐため、国境に壁を作ったり、

日本に核を持たせて、米国の防衛負担を軽減する

など過激な発言で、オバマ政権下の不満分子の

心をつかみました。

米国第一主義は、国外でお世話をするより、国内の

不満を解消する政策を優先させることです。

安い輸入品や安い労働力で、職を奪われた労働者の

不満は限界に達していたので、トランプ氏の発言は

的を得たことになります。

米国は広大で、生まれてから一度も自分の州から

出たことのない人も多いわけです。

それが海外からのヒト・モノの流入で生活を脅かす

ので、じっとしていられません。

島国日本なら黒船が来て、自分たちが変わらなければ

国が滅ぶという危機感を持ちましたが、米大国では、

移民を阻止し関税を上げ、ヒト・モノの流入を抑える

ことで対応するのがトランプ氏のchangeの政策です。

自分たちは変わらずにグローバルなヒト・モノの流れ

を食い止めるchangeです。

トランプ氏の政策は、一時的に国内経済を救えるかも

しれませんが、長い眼で見ると国外の信頼と尊敬を

失う結果になりかねません。

今週の言葉は、またまた老子より新大統領に捧げます。

「うまく敵に勝つものは敵と争わない。

上手にひとを使うものはへりくだっている。」

政治経験も軍隊経験もないトランプ氏は、

公約を実行するにはひとの知恵を借りる必要がある。

ひとを上手く使うには、頭ごなしの物言いではだめで、

謙譲の姿勢が必要になる。

米国を、さらに世界をひとつにまとめていくには、

この老子の言葉が欠かせない。

 

有無相生

 

 

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