老子小話 VOL 833 (2016.10.29配信)

重為軽根、静為躁君。

(老子、第26章)

 

重きは軽きの根たり。

静かなるはさわがしきの君たり。

 

久しぶりの老子です。

あと数日で11月で年賀状が発売開始になります。

「今年もあと僅か」と毎年感じるのは残された時間

の重さが増していることなのかもしれません。

電車通勤をしているとホームや車内のアナウンスの

さわがしさが鬱陶しくなることがあります。

ホームでは、ホームの縁を歩かないでくださいとか、

ドアに挟まれないように注意してくださいという。

ホームが静かになるのは終電が行った後。

車内では、電車が数分遅れるとか、優先席ではマナー

モードにしてくれとかいう。

乗客もさわがしきことに慣れて何とも思わない。

老子は「静かなものはさわがしいものに優る」という。

京都の枯山水を前にして心を静かに落ち着けると、

聞こえなかった自然の声が聞こえてくる。

物事が静かに整然と流れていくのが本来のあり方である。

学校の授業でも会社の会議でも、静かに聴いてこそ、

内容が頭に入ってくる。

自動車もハイブリッドやEVになって騒音を減らす。

また老子は「重いものは軽くうわついたものの根本に

なる」という。

宇宙の進化を見ても、水素やヘリウムなどの軽い元素

が核融合を起こして鉄という重い元素が生まれ星を作る。

重いものが核となり地球という星を支え、その表面で

人類が栄えている。

橋もビルも電車も車も、骨組みは皆鉄でできている。

重いものは沈み、内側から支えているので目立たない。

一方、軽いものは外側を飾り目立つが、地震とか事故が

起きたときに命を護るのは、重い骨組みである。

これは物理的な重さだけではない。

人間の言葉も同じである。

重い言葉は普段あまり耳にしない。

でもその一言が国や人間の将来を変える。

軽い言葉は、大量にそして頻繁に社会を飛び交う。

それをさわがしさというが、その中で心に沈んでいく

言葉を探していくのが生きる意味なのかもしれない。

 

有無相生

 

 

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