老子小話 VOL 832 (2016.10.22配信)

千金難結一時之歓

一飯竟致終身之感

(菜根譚)

 

千金も一時の歓を結びがたく

一飯もついに終身の感を致す

 

NHKのETV「こころの時代」で、興福寺の貫首さん

が菜根譚のお話をされました。

菜根譚は、仏教・儒教・道教のエッセンスをまとめた

本で、人生のいかなる場面でも参考になる言葉が満載です。

今週は、どんな時にありがたさを感じるかという、

問題提起のお言葉をお届けします。

「大金を与えてもその場限りの喜びも得られないこともあり、

ほんの僅か恵みも、案外、一生の恩を感じることもある。」

外国で旅行をすると、チップを払う場面があります。

食事の後とか、タクシーを降りるときに払います。

理由はサービスに対して感謝の意味で渡します。

あくまでも感謝の意味なので、その額は適当な額に

しなければなりません。

サービスを施した側にとれば、もらった金額でお客の

評価を知ることになります。

お客も懐具合やその日の気分で額を決めるので、

額はまちまちになります。

従って、大金を渡しても過剰評価となり、今後の

サービス品質向上には役立ちません。

逆に、いい加減なサービスでいいのかと間違った

認識を与えかねません。

逆に少額でも、差し出すタイミングと暖かな感謝の

言葉をこめるだけで、受け取る側の向上心にささやかな

応援を送ることができます。

つまりチップは義務で出すのでなく、心で渡すのが筋です。

従って、金額は出す人の心に従いまちまちとなります。

話はチップに限らず、子供のお手伝いに対してお駄賃を

あげるときも当てはまります。

手伝いをする前に額を決めては、子供のためになりません。

お手伝いの評価は結果が出てからするもので、評価の金額は

評価する側の気分(心)で決まることを理解させるのも

立派な教育です。

相手を感動させるためにどのようなサービスをすればいいか、

子供に考えさせ、努力したことが金額として報われないこと

もあることを学ばせるのも、立派な社会勉強となります。

不条理な世の中に対する耐性を身に付け、でもその不条理を

乗りこえるものは自分の心と努力しかないことを知るのは、

育っていく子供にとって一番大事なことです。

菜根譚の言葉は、ありがたさを決めるのは金額の大小ではなく、

相手から伝えられる感謝の心であることを教えてくれます。

 

有無相生

 

 

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