老子小話 VOL 831 (2016.10.15配信)

The answer is blowin’ in the wind.

(Bob Dylan)

 

今週は、ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞

のニュースで湧きました。

当の本人は迷惑なのか雲隠れしているようですが。

受賞に関して賛否両論が吹き荒れています。

まさに、答えは「風に吹かれています」。

「風に吹かれて」という曲は教科書にも載っている

ような有名な反戦歌です。

今回の言葉には実に深い意味があります。

村上春樹氏が「職業としての小説家」で引用している

ポーランドの詩人の言葉、

「源泉にたどり着くには流れに逆らって泳がねばならない。

流れに乗って下っていくのはゴミだけだ」

が頭に浮かびました。

本当の答えは、流れに耐え、雑音を削り落とし、

もう削るものがない所まで行って見えてくる。

「風に吹かれて」の風は、この流れのようなものです。

風に吹かれて流されるのではなく、風に向かって耐えて、

風上に向かって泳いでいかないと答えは得られない。

文学というと小説や詩が頭に浮かびますが、人間は

なぜ文学を作るのかというと、言葉によって人に

生きる力を与えるためと作ると考えられます。

とすると、歌だって立派に力を与えてくれます。

だから、文学を広く捉えて文学賞の意味を考えれば、

ディランの受賞は納得できるかもしれません。

ノーベル賞自体が所詮権威のある人の判断を仰いで

決定されるので、その人々の見識で左右されます。

そんなことで一喜一憂するのは馬鹿げています。

ジャン・ポール・サルトル先生がノーベル文学賞を

拒否したのも、受賞で自身が権威化するのを避けた

ためです。

「答えは風に吹かれている」

風は世間の批判や議論であり、内なる雑念である。

そういうものに流されずに自由に泳いでいくと、

時間の経過とともに答えらしきものが見えてくる。

風に向かって泳いでいく意志を「風に吹かれて」

に感じました。

泳がないと、答えは見えてこないと。

 

有無相生

 

 

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