◆老子小話 VOL
830 (2016.10.08配信)
『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている
(大隅良典)
今週は、大隅先生のノーベル医学生理学賞受賞のニュース
で湧きました。
本当におめでとうございます。
大隅先生のお言葉を今回拝借しました。
自然科学の謎を解明するために貢献した人間はあまた
おりますが、ノーベル賞を受賞できるのはその中の
一握りです。
研究への熱意と努力と幸運がそろわないと成しえない
ことを痛感いたします。
「役に立つ」が研究に先立つと、自然の神秘の解明は
できないというお言葉です。
たとえ役に立たなくても、自然の神秘を知ることは
人間が生きる謎を解き明かし、人類の存続という
大きな偉業に貢献できるという信念が込められています。
先生が研究されたオートファジーは、細胞のリサイクル
(自食)というそうで、細胞が自分自身を分解して
できた物質を新たな細胞を作るのに利用する働きです。
この働きを酵母菌で見つけたのが受賞の理由です。
生物が生きていることがこのような神秘に支えられて
いることに感動します。
我々がどうして生きていられるのか、細菌から進化して
人類にたどり着くまで、いろんな働きを身につけて、
それをDNA情報として体に記憶して次世代につないでいく。
そんな壮大なストーリーを秘めている自分の体をいたわる
ことが、生命の神秘への感謝かもしれません。
自分の体をいたわることが社会へのいたわりに発展する。
それが教育の原点であるように思います。
自分の体ですら飢餓の中で必死に生きようと、自分の体を
分解して我々の生を支えてくれているのに、苦悩に負けて
自死することは悲しい結末です。
自然科学の謎を学ぶことは、生きる力をもらう機会かもしれない。
そんな思いが走った一週間でした。
有無相生