老子小話 VOL 829 (2016.10.01配信)

もうすんだとすれば これからなのだ

あんらくなことが 苦しいのだ

暗いからこそ 明るいのだ

なんにも無いから すべてが有るのだ

(まど・みちお、「もう すんだとすれば」)

 

まど・みちお詩集「こころのうた」(ハルキ文庫)

よりお言葉を拾いました。

詩の冒頭だけなので、続きは本を見てください。

老子の心を詩に歌い上げています。

詩の最後は、

「生まれてくることは 死んでいくことだ

なんでもないことが 大変なのだ」

でくくられます。

「もうすんだすれば」は、人間の場合、

「もう生まれたとすれば」にあたります。

無事に生まれたとすれば、大変なのはこれから。

「なんでもないこと」は「生きること」。

だから長生きしているということは大変という。

働かないで生きることははた目には安楽に見える。

でも当人にとっては、苦しいことである。

私も若いときは、早く隠居して自適の余生を送ろう

と考えていました。

ところが年金支給年齢は引き上げられ、退職金もわずか。

働かないと生きてはいけなくなりました。

まどさんは、天国に行けたとしても安楽どころか、

退屈で苦しい毎日が待っていると言っているようです。

光輝く世界では、光のありがたさに気づかない。

荒野の暗闇に灯る光こそが、旅人の心の支えとなる。

「なんにも無いからこと すべてが有る」

は老子の思いそのものである。

心を空っぽにするので、すべてのもののありがたさが

感じられる。

宇宙空間のほぼすべてはなんにも無い。

なんにも無いからこそ、すべてのものを取り込める。

空間が星で埋まっていたら、動くことさえままならず、

光も地上に届かない。

まどさんの言葉をかみ締めると、気の持ちようで

すべてが変わってくるのがわかる。

 

有無相生

 

 

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