老子小話 VOL 822 (2016.08.13配信)

道之以政、齊之以刑、民免而無恥、

道之以徳、齊之以禮、有恥且格。

(論語、為政第二)

 

これを道びくに政を以てし、

これを斉(ととの)うるに刑を以てすれば、

民免れて恥ずることなし。

これを道びくに徳を以てし、

これを斉うるに礼を以てすれば、

恥ありて且(か)つ格(ただ)し。

 

リオ五輪が始まって一週間が経ちますが、

柔道ではメダルラッシュの快挙が続きます。

柔道の試合を見ていて、感じたことを

論語を引いてお話したいと思います。

まずは論語の言葉は、

「人民を法令で導き、刑罰で正そうとすれば、

彼らは罰を逃れることを恥に思わなくなる。

一方、人民を徳で導き、礼で正そうとすれば、

彼らは恥じて正しくあろうとする。」

という意味になります。

柔道は、礼で始まり礼で終わる武術です。

単に勝てばよいというものではなく、

正々堂々と技を掛け合って、勝負を決める

のが本来のあり方です。

今回の五輪の試合を観戦していて、組手を

組むのを避け、指導のみで勝負を決する試合

が目につきました。

指導の回数で優位に立つと防戦に終始し、

ひたすら時間が来るのを待つというのは、

礼を以って正々堂々と戦う柔道の精神に

反する、納得がいかない勝ち方です。

短い時間で勝負を決するためには、

ルールと罰則が必要なのはわかりますが、

礼を忘れた戦いは、柔道ではなくなります。

指導というルールも、守りに入らずに

堂々と戦わせるためにあります。

指導は審判の心象で決まり主観が入るので、

1回の違いで負けが決まるのは無理があります。

そんな無理な試合が決勝でも見られました。

論語がいうように、ルールを悪用し恥を忘れた

勝負をしていたのでは、スポーツ精神に反します。

柔道は単なる格闘技と違い、相手への礼を尽くし、

正々堂々と戦った上での勝ち負けなので、指導を

気軽に出す審判には慎重な配慮が求められます。

こんなことを言うと、ルールはルールだと反論する

ひとも多いと思います。

しかし、柔道の精神を忘れた試合は最早柔道では

ありません。柔道には礼儀を通し、堂々と戦う

ために心を鍛えるという武道の精神があります。

それを反映した慎重なルール作りが欲しいなと

感じさせる、孔子のお言葉でした。

 

有無相生

 

 

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