老子小話 VOL 820 (2016.07.30配信)

故善戦者、求之於勢、不責於人。

故能択人而任勢。

(孫子、勢篇第五)

 

故に善く戦う者は、

これを勢いに求めて人にもとめず。

故に、よく人を択びて勢いに任ぜしむ。

 

今回は、孫子からお届けします。

戦いには人を波に乗らせる勢いが大事

というお話です。

戦いといっても、人同士が傷つけあう戦争

にとどまらず、ビジネス上の競争だったり、

スポーツ上の競争だったりします。

戦いを指揮する者の心得として、

「戦いの上手な者は、優秀な人材を求めずに、

平凡な人材を適所に配置し、勢いに乗らせて、

戦わせるものである」と教えます。

どんな人でも勢いに乗れば、丸い石が坂を

転げ落ちるように、普段の能力以上の働き

が出せるようになります。

逆に勢いに乗れないと、どんな優秀な者でも

普段の能力すら出せない場合があります。

今の内閣にとっての戦いは、デフレ脱却して、

経済成長の波に乗ることです。

しかしアベノミクスの施策の効果はまだ道半ば。

政府が発行する国債を日銀が大量購入して、

市場に金をばら撒いて、貨幣価値を下げ物価を

上げようという手段に転じようとしています。

これをヘリコプタマネーと呼ぶそうです。

円高株安で、年金積立金まで5兆円の運用損

を出し、年金支給額の減額のおそれも出ています。

安倍首相としては、このデフレ脱却の戦いに臨み、

国民や企業を勢いに乗らせる仕掛けが欲しいわけです。

「一億総活躍」はそのキャッチコピーです。

いろんな施策はとられているようですが、インパクト

のあるものが少ないようです。

将来を支える若者を元気にしたければ、高校や大学の

授業料無償化とか行って、借金を抱えて勉学に励む

学生を無くすのはインパクトがあります。

アベノミクスの効果が見えないのは、インパクトのある

施策がないのと、対応の遅さが問題と思われます。

天皇の生前退位の問題も、高齢化への対応の遅さが

原因でしょう。

成長戦略は、とかくお金を稼ぐことで勢いを

つけようとしますが、成長の質を見直したほうが

よいかもしれません。

お金がかからない社会の実現に向けて、どんな

施策があるのか知恵を持ち寄り、実現すべき時が

きています。

 

有無相生

 

 

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