老子小話 VOL 818 (2016.07.16配信)

知人者智、自知者明。

勝人者有力、自勝者強。

(老子、第三十三章)

 

人を知る者は智なり

自らを知る者は明なり。

人に勝つ者は力あり、

自らに勝つ者は強し。

 

今回は、老子からお届けします。

TAO CHATが老荘小話からスタートしたことから

原点の思想を時々お届けするのは義務と考えます。

最近のビッグニュースは、天皇の生前退位の意向

と、中国が主張する南シナ海の領有権に対する

無効の裁定でした。

天皇の退位の問題は、高齢化に法律や仕組みが

どう対処していかねばならないのかという、

問題提起だと思います。

むしろ政府がこれを放置していたことが問題で、

今になって慌ているのが可笑しく見えます。

戦前には神とあがめられていた天皇が、敗戦して

国民の象徴にされたときはあっという間に憲法に

盛り込まれました。

その欠陥憲法の改正も未だに手付かずで、皇室典範

もまた憲法と一体で放って置かれ、今回天皇自らが

その改正を問題提起されたのが、戦後日本の象徴

のように見えてきました。

憲法改正より先に皇室典範改正に手をつけなければ

いけない状況は、高齢化社会への後手の対応同様、

皮肉なしっぺ返しといえます。

戦没者慰霊や大震災被災者慰問を精力的になされ、

死者生者問わず、国民の心に寄り添うお姿は、

国民を知り、象徴のお立場を全うされる天皇として

胸打つものがあります。

高齢者問題は国民だけの問題ではなく、象徴天皇の

問題でもあったことが天皇ご自身のお言葉で明らか

にされたのは、老子の言葉どおり、明智のお人で

あられることが窺われます。

もう一方のトピックの中国は、覇権主義を取り、

軍事力で威圧し、南シナ海の領有権を主張しています。

ベトナムやフィリピンの沿岸まで延びる九段線は

国際法上違法なのは明らかです。

このような覇権主義を前面に出して、海外に国民の目

を向けさせようとするのは、「人に勝つ者は力あり」

の典型です。

しかし、中国の地方に行けば貧しい農民と自立を要求

する少数民族の不満が溢れています。

自国民に対しては、共産党独裁を維持し、自由経済を

導入し、何とか統制を保っているのが現状です。

国民のナショナリズムを煽って、不満をガス抜きする国は、

北朝鮮同様、「自らに勝つ者」とはいえません。

不思議なのは、老子は中国民の先祖でありこんなに優れた

道を説いていますが、あれだけ日本に対し歴史を主張する

国が、自らの歴史を大切にしないところです。

毛沢東により共産党が政権を握ったとき、孔子や老子など、

古代思想や王朝の芸術を全否定した所から、この不思議が

芽生えているのでしょう。

中国が本当に強くなるのは、共産主義という力を借りずに、

国民自らが自国の歴史から学んで、将来の道を選択するとき

でしょう。

老子の言葉は、かくのごとき重々しい現実に横たわる真実を

短い言葉で語ってくれます。

 

有無相生

 

 

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