老子小話 VOL 817 (2016.07.09配信)

上山不高見不遠

入海不深不尽底

(禅林句集)

 

山にのぼること高からざれば

見ること遠からず

海に入ること深からざれば

底を尽くさず。

 

今回は、「禅林句集」(岩波文庫)をめくって

わかりやすかったものを選びました。

「高い山に登らなければ遠くを見ることができず、

深い海にもぐらなければどん底がわからない。」

ごく当たり前の言葉ですが、自分の視点を意識して

拡げないと世界は見えないという深い教えです。

日常生活に追われていると、自分の現在の視点が

捉える世界が世界だと思うようになります。

無宗教の同じ人種が集まった均質で安全な世界が

とりあえずの世界になります。

バングラデッシュのテロ事件は、同国の復興のために

派遣された日本人を犠牲にしました。

「とりあえずの世界」から見ると、恩人ではなくても

敵に見られるはずはないと考えてしまいます。

これは政府もそういう考えだったと思います。

文明国でありながら人種差別と銃規制がなくならない

米国のダラスでも、警官襲撃事件が起きました。

相次ぐ警官による黒人射殺事件への報復の感があります。

テロとの戦いを掲げる米国ですが、自国でのテロが最大の

テロだといえます。

何故なら、テロの原因を自国が抱えているからです。

大統領候補が人種差別を持ち、公平に治安を守るべき

警官が人種差別を持ち、差別される側が銃を持って、

それに報復するからです。

米国にとって登るべき山は、銃規制と人種差別撤廃です。

それを越えないと明るい未来は見えてきません。

一方日本にとってもぐるべき海は、日本を取巻く闇について

政府も国民も理解を深めることです。

テロを恐れていては国際貢献なんかできないのは事実ですが、

無防備に人材派遣するのは愚の骨頂です。

自分の視点を拡げるには、実際に山に登り海にもぐり、

自分の目で見ることです。

広い視野で世界を見直すと、「とりあえずの世界」の危うさが

見えてくると思います。

その危うさを指摘しその予防策が打てるような参議院議員を

明日選べたらいいなと考えてしまう言葉でした。

 

有無相生

 

 

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