老子小話 VOL 810 (2016.05.21配信)

人之性悪、其善者偽也。

(荀子、性悪篇)

 

人の生は悪にして、

その善なるものは偽なり。

 

最近の出来事を見て、荀子のこの言葉を

思い出しました。

「人間の生まれつきの性質は悪であり、

善になるには後天的な矯正が必要になる。」

なぜ悪に走るのか?

そもそも人は生まれながらにして、

利を追求する傾向があるからである。

まずは、自動車メーカーの燃費偽装事件。

自分に都合よい燃費テストを行って、

燃費データを偽装する。

法で定められた試験法でやらなくても、

データは大して違わなかったとうそぶく。

そして、現都知事の公費私的流用事件。

身の回りの品物を政治資金で買う始末である。

どちらの事件も、自分の利益のために走る結果。

そんな行為を規制する力が、信頼を失うという

負の対価である。

自分の都合で動く人や企業は誰も信用しなくなる。

同じ過ちを二度繰り返せばなおさらである。

口でどんな素晴らしいことを言っていても、

腹の中で何を考えているかわからないと評価される。

失った信頼を取り返すには、果てしない矯正の努力が

もとめられる。

なぜなら矯正されたかどうかの判断は、自分ではなく、

他人がするからである。

信頼の重さを忘れたとき、人や企業は悪事に走る。

性悪説に基づいて作った法をよく知る弁護士でさえ、

法の抜け道を指南して報酬を得る始末である。

信頼を失った人や企業には仕事は来なくなる。

一時の利が永遠の損につながる所以を

荀子の言葉は教えてくれる。

 

有無相生

 

 

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