老子小話 VOL 802 (2016.03.26配信)

脳のシステムも不平等にできています。

ごく一部のシナプスが元気に働き、

そのほかのシナプスはヘルプする脇役。

(池谷裕二、「脳はこんなに悩ましい」)

 

今回も池谷裕二さんと中村うさぎさんの

対話本から面白い言葉を拾いました。

それ位魅力的な本ということでしょうか。

格差社会を是正するのが資本主義の役目に

今思われていますが、不平等が自然の摂理で、

脳の中でも不平等を維持しながら、省エネで

高速処理を保っているようです。

一億総活躍社会では皆疲れ切ってしまい、

誰かが疲れたときに立ち上がれる誰かを

普段は休ませておく社会が、省エネ社会で

しかも持続可能な社会といえます。

アリの社会も、働かないアリがいるから、

社会が長続きするという話があります。

不平等や格差というと聞こえが悪いですが、

個々人が不平等や格差を自然の摂理と受け止め、

不平不満を言わずに自分の役割を果たすこと

が「持続可能な強い社会」の条件に思えます。

高齢者社会は、自然の摂理に反し、誰もが平等に

福祉・医療を受けて平均寿命が延びた結果です。

その結果国の借金が増え、若者の負担が増え、

少子化につながりました。

そんな日本が今後生きのびるには、

一億総活躍社会といった脳天気なスローガンを

掲げても何も進まず、省エネ社会に向けて、

格差をどのように維持しながら、皆が納得して

自己の役割を果たしていくことが重要になります。

思えば人間社会は、自然の摂理に抗しながら進歩し、

文明を築いてきました。

戦争や革命により不平等な社会から平等な社会に

移行し、医療の発達と福祉により長寿社会になり

少子高齢化という問題を生みました。

しかし、自らの脳が自然の摂理に従っている以上、

脳の仕組みにならい格差をうまく利用する省エネ社会は、

国の成長のヒントを与えてくれそうです。

 

有無相生

 

 

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