老子小話 VOL 801 (2016.03.19配信)

まず進化の過程で、「他者の心」を読んできた。

(池谷裕二、「脳はこんなに悩ましい」)

 

脳に関係する本はいつも注目している本です。

なぜなら自分の脳の正体を垣間見ることが

できるからです。

今回は、池谷裕二さんと中村うさぎさんの

対話本から面白い言葉を拾ってみました。

イヌを飼っているとイヌに心があるのはわかる。

外から帰ると玄関で尾を振って出迎えてくれる。

美味しいものを食べていると近寄ってきて、

自分にもくれと足でさすって訴える。

でもイヌは自分に心があることは知らない。

自然界で、相手の生物に出会ったときに、

相手が自分を食べたいと思っているか、

そうでないかを瞬時に判断できないと

生きていけない。

その意味で、「他者の心」を読めることが

死活問題になる。

ところがヒトは、

「他人に心があるということは、

ひょっとして自分にも心があるのでは?」

と「私の発見」をするようになる。

赤ん坊から幼児へと成長するときに、

親の優しい表情から親の温かな心を感じ、

その表情をまねることで自分の感情を

表現するステップを踏む。

自分の成長にはいつも他者の心があった

ことをあらためて知る。

「まね」から始まって、相手の心に

自分の心を見るのが心の進化と教えられた。

温かく育てられるか冷たく育てられるかで、

自分の初期の心が決まってしまう。

いくらその後の環境で修正されても、

初期の心はその後の人生に影響する。

自分の心がどのように成長してきたのか

知ることは、ターニングポイントで判断を

誤らないために必要なことがわかった。

生きるための最低条件は「他者の心」を読むこと。

よりよく生きるための条件は、「自分の心」を

読むことで、その習性を自覚することだと思った。

今回の言葉から、心を読むという脳の機能も

動物からヒトへの進化の過程で進化してきた

ことがわかる。

人工知能が囲碁の名人を破るご時世となりました。

心を読むという機能も人工知能が果たせれば、

脳と心は今後どのように進化していくのか興味が

湧いてきます。

 

有無相生

 

 

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