老子小話 VOL 798 (2016.02.27配信)

風さそふ花のゆくへは知らねども

惜しむ心は身にとまりけり

(西行)

 

暖かくなり、花粉の季節が来ました。

目頭がかゆくなりくしゃみも出ています。

桜の開花を待ち望む気持ちとともに

西行さんの歌をお届けします。

「風に誘われて散る花の行方はわからないけれども、

桜を惜しむ心はこの身を離れない。」

西行流の「我思うゆえ、我あり」のようです。

桜を散らす風、風に散る桜、我を囲む世界は、

無常の世界です。

どこからともなく吹いてきて去っていく風。

春のひと時に花を咲かせ、見る間に散っていく桜。

風に誘われて散るのか、風を誘って自ら散るのか

わからない。

いずれにしても世の中には常に動いており、

ひとところに落ち着くものはない。

その行く先もわからない。

一瞬の美しさに無常を感じる心だけは、

わが身にとどまっており、

それが生きていることの証である。

しかし、わが身すら新陳代謝で変化しており、

心が肉体に宿ることだけが変わらない。

「心は身にとまりけり」は意味が深い。

身が病むと心も病み、心が病むと身も病む。

身心一如を表わした歌のように思えませんか。

 

有無相生

 

 

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