◆老子小話 VOL
796 (2016.02.13配信)
曰、恭寛信敏恵。
恭則不侮、寛則衆得、
信則人任焉、敏則有功、
恵則足以使人。
(論語、陽貨第十七)
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古代中国では字が読めたのは指導者層だったから、
説かれた思想は自ずとリーダ論になるという先生の
説明は納得がいきました。
老子にしても、強者が弱者を治めるには何をすればよいか、
大自然の摂理から道を起こして説明しているようです。
大自然の摂理は無為であり、柔弱が長命を保つという
視点で強者の要素であると考えたのが画期的でした。
今回は論語より、孔子が弟子の子張より「仁とは何か」
と問われ、仁の五つの要素を答えた言葉をお届けします。
「恭しくあれば侮られることはない。
大らかならば人望が集まり、信があれば人から頼りにされ、
機敏であれば仕事ができ、恵み深ければうまく人が使える。」
政治も経営も、迅速に国民・社員の生活を守ることで、
やるべきことを果たし、それを行うにあたり寛容に
慎んで実行すれば、信用も集まるというものです。
老子的に見れば、水は柔弱の代表みたいなもので、
民を治めるお手本と考えます。
水は相手の形に応じて姿・形を変え、高い所から低い、
目立たない所に移動し、すべての生命を支えます。
その動きは、謙虚で寛容で機敏です。
孔子と違うのは、信を得ようと作為するのではなく、
自ずと民の信が集まるということです。
また、恵みも民が気づかないうちに届け、後で
自ずと民が気づくようになる点です。
日と雨の恵みが米と野菜の生長を促し、収穫後に
民がその美味しさに触れて、恵みに感謝するような
ものです。
強者は剛強を誇るのではなく、低い所から目立たぬように
弱者を支えるのが老子の治世の要諦となります。
老子は「天地不仁」(第五章)といい、自然に仁を認めない。
自然は、民に恵みも被害も及ぼす。
仁と感じるか否かは、被治世者(民)の受け取り方です。
被害を受けても自然の警鐘と考えれば、仁になります。
孔子の教えが人間世界の中でうまく回るための方策なら、
老子の教えは人間を取巻く世界の中で人間が生き残る
方策を与えているようです。
有無相生