◆老子小話 VOL
790 (2016.01.02配信)
小知不及大知。
小年不及大年。
奚以知其然也。
(荘子、逍遙遊篇)
小知は大知に及ばず。
小年は大年に及ばず。
なにを以ってその然るを知るや。
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
年初めは、「荘子」より道(タオ)の言葉をお届けします。
小知は、視野の狭い知恵です。
小年は、寿命の短い生物です。
小知も小年も、自然の道理を知ることはできない。
荘子は、この真実をたとえ話で語ります。
朝の間しか生きることのできないきのこは、
朝を知っても夕を知ることができず、
蝉は春を知っても秋を知ることはない。
寿命によって、その生物にとっての時間は様々に違う。
人間も約80年が、自分の見ることができる世界ですが、
千年も生きる大樹は、鎌倉時代から現代に至る人間の
交代をじっと見続けています。
長生きした人間は、隆盛期から衰退期までの社会の
変遷を知ることができ、短い寿命の人間は、一時の
社会の流れを知るにとどまります。
悠久の時間に生きたものが世の行く末を見届けられます。
宇宙の一生が、宇宙誕生期に生まれた素粒子の変化を
調べることでわかるようなものです。
大鵬は三千里の旅をするために九万里の上空高く飛ぶ。
そのために三ヶ月前から食料の準備をする。
それを見ていた鳩は、その大げさな試みを笑う。
自分の日常から余りにもかけ離れているからです。
住む世界が狭いと、その世界の常識がすべてを
支配すると思い込みます。
住む世界が広がると、今まで住んでいた世界では
見えなかったものが世界を支配することに気づきます。
自分の殻を突き破ることが、大知や大年への窓口に
なります。
何を以って自然の道理を知るのか?
その鍵は、自分の目と耳で時空の殻を感じ、
より大きな世界から自分を捉え直すことだと
荘子は教えてくれます。
有無相生