老子小話 VOL 789 (2015.12.26配信)

All’s well that ends well.

(William Shakespeare)

 

終わりよければすべてよし。

 

2015年最後のお届けとなりました。

シェイクスピアの戯曲の題名になっている言葉です。

最後の結果に到達する過程でいろいろ問題は

あったものの、最後に満足の行く結果が出せたなら、

よしとしようという、ポジティブな言葉です。

たとえるなら、恋人同士が結婚に行き着くまでに、

けんか別れや浮気疑惑などすったもんだあっても、

その試練を乗り越えて愛情を確かめたのち、

夫婦の契りを結ぶようなものです。

「よし」(well)と判断する基準は、ひとそれぞれ違い、

終わりがよくてもすべてがいいわけじゃないという

ひともいます。

スポーツ選手は継続的に結果をださなきゃいけないので、

運よく一時的にヒットやゴールにつながっても、

その前のプロセスに納得がいかないケースもあります。

結婚ですら、そのときはうまくいったと思っても、

苦労の始まりだったというようなこともあります。

愛を継続するにも努力が要りますし、愛があっても、

困難や不幸に押しつぶされることもあります。

とすると、シェイクスピアがいう「終わり」とは

短期的な人生の出来事の「終わり」というよりも、

人生の最後、「死」を意味すると思われます。

ひとが生を受けて、人生の荒波を乗り越えたのち

死を迎えるに際し「これでよかった」と思えるなら、

そのひとは幸せだったということになります。

逆に言えば、「終わりよければすべてよし」は、

最後にこの言葉がいえるように日々の生活を

大切にしようということになります。

まさに仏教の教えにもつながるものです。

赤塚不二夫氏の「これでいいのだ」も、

一日のうちいろいろあったが、悔いを明日に残さず、

一日ごとに精算していくものです。

英国の文豪を超えて、毎日の終わりを「死」と捉え、

明日から生き返るという力強い生き方です。

本年も一年間このような雑談にお付き合いいただき、

心より御礼申し上げます。

よいお年をお迎えください。

 

有無相生

 

 

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