老子小話 VOL 786 (2015.12.05配信)

我々の自然を愛する所以は、

━━少なくともその所以の一つは

自然は我々人間のように妬んだり

欺いたりしないからである。

(芥川龍之介、「侏儒の言葉」)

 

あっという間に12月に入りました。

先日京都に紅葉を見に行きました。

醍醐寺、東福寺、南禅寺、高台寺、

慈照寺、真如堂、金戒光明寺と

電車とバスを乗り継いで歩き回りました。

今年は異常気象で紅葉は完璧ではありません

でしたが、京都の自然に溶け込んだお寺の

優雅さを堪能できました。

芥川さんも言うように、自然を愛する理由は、

気象の成り行きのままにいろいろ姿を変えて、

その変容をありのままに見せてくれる所でしょう。

紅葉がまばらのままで終わるのも、

我々を欺いているのではなく、気象の異常を

そのまま自分の姿に映しているのです。

光の加減で紅葉の鮮やかさが変貌するのも、

光の変化を自分の姿に映し出しているからです。

真如堂では、緑の中に紅葉前の黄色の葉と

赤に燃える葉が、モザイク模様のように

交じり合い、印象派の絵のような光景に

出会えました。

紅葉は、気温が一気に下がることで美しさを

増しますが、温暖の影響でまばらに起こるのも

味わいを与えてくれます。

自然の素直さが自然の美しさでもあるのでしょう。

その素直さに触れ心が安らぐので、ひとは自然を愛すると、

芥川さんの言葉は語っているようです。

 

有無相生

 

 

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